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CO2濃度による換気の監視

エアロゾル感染から身を守るためのFAQ

9章 CO2濃度による換気の監視

このページは専門家グループが作成した「エアロゾル感染から身を守るためのFAQ」のCO2モニターに関する章を管理人 @music1984_20xx が日本語に翻訳したものです。

オリジナルの英語版はこちらです。 http://tinyurl.com/faqs-aerosol Version: 1.87, 9-Dec-2020

0.2 このFAQを書いたのは誰ですか?

室内空気環境品質、エアロゾル科学、エアロゾル感染、エアロゾル制御工学の各分野で長年の経験がある科学者とエンジニアが執筆しています。COVID-19のエアロゾル感染に関して研究をしているメンバーです。五人はUS National Academies of Sciences, Engineering, and Medicineが開催した「COVID19の空気感染に関するワークショップ」の講演者でした。三人はWHO COVID-19専門家グループのメンバーです。

  • Prof. Linsey Marr (Virginia Tech, Fellow ISIAQ)
  • Prof. Shelly Miller (CU Boulder, Fellow ISIAQ)
  • Prof. Kimberly Prather (UC San Diego, Fellow AAAS & AGU, NAE & NAS, CAICE Director)
  • Prof. Charles Haas (Drexel University, Fellow AAM & SRA)
  • Prof. William Bahnfleth (Penn State, Fellow ASHRAE, ASME & ISIAQ, Chair of ASHRAE Epidemic Task Force)
  • Prof. Richard Corsi (Portland State, President ISIAQ Fellows)
  • Prof. Julian Tang (Univ. of Leicester & UK National Health Svce, Clinical/Academic Virologist/Physician, Fellow RCP-Virology)
  • Prof. Hartmut Herrmann (Dept. Head, Leibniz-Institute for Tropospheric Research (TROPOS), University of Leipzig; Head Joint Working Party ‘PM’ of GDCh, KRDL and ProcessNet).
  • Prof. Krystal Pollitt (School of Public Health, Yale University, Chair of Health-Effects Working Group AAAR)
  • Prof. Javier Ballester (Engineering School, Universidad de Zaragoza)
  • Prof. Jose-Luis Jimenez (CU Boulder, Highly Cited Researcher (h-index = 121), Fellow AAAR & AGU).

0.5 この情報を他の出版物などで使用できますか?

必要に応じて使用できます。許可を得るために連絡する必要はありません。ただしオリジナルソースへのリンクhttp://tinyurl.com/faqs-aerosolを明示してください。可能であれば、上部に記載されている日付とバージョン番号を含めてください。著者リストが必要な場合は、上記の人をリストしてください。

8.1. 換気とはどういう意味ですか?

この文脈での換気とは、屋内の空気を屋外の空気で希釈することを意味します。 部屋の中の空気を動かすファン(扇風機)は「混合(かき混ぜ)」ですが換気ではありません。 下の図に示すように、換気により、屋内のウイルスを含む可能性のある空気は、屋外からのウイルスのない空気によって希釈されます。 換気がなされていない環境で大規模感染(スーパースプレッダー、超拡散)が発生する傾向があることは明らかです。 この動画は、エアロゾルの蓄積に対するさまざまな換気戦略を示しています。

屋内空間からウィルスを含んだエアロゾルを除去するための換気の効果 Morawska et al. (2020).

9.1. CO2濃度を換気の良し悪しの判定に使えますか?

はい、制限はありますが非常に便利な方法です。屋外でのCO2濃度は約400ppmですが、人が吐く息の濃度は約40000ppmです。そのため息を吐くと屋内ではすぐに濃度が上昇します。精度の良くCO2モニターが安価に手に入るので、CO2濃度の測定はある空間で吐かれた息の量を測定するための最適な方法です。

  • 〜400 – 500 ppm: 換気が良好
  • 〜800 ppm: あなたが吸う息の1%はその空間がにいる誰かが吐いた息です。危険性が生じ始めます。
  • 〜4400 ppm: あなたが吸う息の10%はその空間にいる誰かが吐いた息です。非常に危険です。このレベルの濃度は学校などの換気の悪い、密集した環境でよく観察されます。

COVID-19感染リスクを下げるための換気の良い空間でのCO2濃度は約700ppmです。CO2濃度は入手しやすい(約16000円以下の)センサーで測定し、簡単に多くの人に知らせることができます(9.4節参照)。

「安全な濃度」として500ppmから950ppmまで様々な値が推奨されています。広く推奨できる値として、多くの人にとって現実的でシンプルなバランスの取れた値を選ぶ必要があります。これはソーシャルディスタンスとして一桁の数字(1mや2m)が選ばれているのと同じ理由です。最も重要なことはたくさんの人がいる空間で2000ppmや3000ppmあったら安全ではないということです。何らかの改善策をとる必要があることを認識しなければなりません。教室やオフィスをCO2モニターで調査するのは換気の悪い箇所を探し出し、改善の優先順位をつけるために役に立ちます。


訳者注) 日本では厚生労働省が1000ppm以下を推奨しています。学校に関しては文部科学省が1500ppm以下を推奨していますが、これは感染リスクを考慮に入れたものではなく高すぎるという批判があります。文部科学省からのガイドラインの中でも昼食時に関しては厚生労働省のガイドラインにあわせて1000ppm以下を推奨しています。

9.2. CO2濃度と感染リスクの関係で制約や注意事項はなんですか?

CO2濃度を感染リスクの代替指標(surrogate)として用いるためには、いくつかの制約や複雑性を考慮する必要があります。

  • 細かく見れば屋内CO2濃度と感染リスクの関係は複雑で、様々な前提条件によって変化します。その地域の感染者の数、その屋内の空間で過ごす時間、活動の種類、などです。例えば歌う、叫ぶ、激しい運動をするなどは、吐き出し吸い込まれるエアロゾルの量が多くなるため、CO2濃度が同じでもよりリスクが高くなります。より詳細にはこちらの論文を読むか、COVID19エアロゾル感染シミュレーターで計算をしてみてください。
  • また、空気清浄機はエアロゾルを取り除きますがCO2濃度は変化しません。空気清浄機が設置されている場合はCO2濃度が高くても問題ない場合がありますが、1000ppmは(感染以外の)健康上の理由もありお勧めできません。このシミュレーターでは教室で空気清浄機が使われた場合に許容できるCO2濃度を計算できます。
  • 他にも料理や燃料を燃やす暖房など何らかの燃焼を伴うCO2発生源がある場合も、CO2濃度を目安として用いるのには制約があります。測定をしている間はこれらのCO2発生源を止める必要があります。似たような状況として非常に交通量が多い場所では屋外のCO2濃度が400ppmよりも高くなるため注意が必要です。
  • 交通量が多い時の車の中、非常に交通量の多い道路に面した部屋の中なども同様に制約があります。こうした場合屋外のCO2レベルは400ppmよりはるかに高く550ppm程度になります。こうした場合は基準を700ppmではなく850ppmにするなど屋外のCO2濃度を考慮したものにする必要があります。
  • 犬や猫などのペットもCO2を吐きますが、多くの場合その影響は小さいです。また屋内の植物もCO2を吸収したり吐いたりしますが影響は小さいと考えられます。

9.3. 屋内で適切な量の自然換気を行えているか判断するためにCO2濃度の連続測定をどのように用いるのがよいですか?

学校その他の人があつまる屋内環境では、ある程度の人数がいる時間帯は、常に窓を開け続けることが重要です。これにより継続して放出されるウィルスを絶え間なく薄めて屋外に排出し、屋内に蓄積しないようにすることができます。「1時間に5分」といったように間欠的に窓を開けることはお勧めできません。

窓を動かさず、風の条件も変化しない場合、CO2濃度はすぐに一定の値に落ち着きます。これは吐き出されたCO2の量が窓から出て行った量とおおよそ同じであることを意味します。この時の値を700ppm以下に保つことが理想的です。このグラフはスペインのある学校における実測値です。薄い青色で示された時間帯は人々が出入りをした時間帯や窓開けなど換気に変化のあった時間帯を示しています(二日間の間に一度窓が開けられています)。

スペインの学校でのCO2実測データ

もしCO2濃度が高すぎる値で安定している場合は、もっと窓を開ける必要があります。もし、CO2濃度が十分に低く、中に居る人が暑すぎる/寒すぎる場合、窓をすこし閉めても大丈夫です。もし、温度を快適な値にしつつCO2濃度を低く保つことができないのであれば、別の方法、例えば空気清浄機の使用、部屋に入る人数の制限などを行う必要があります。

例では三箇所の窓を15cmだけ開けることで700ppmに保つことができています。多くの場合全ての窓を全開にする必要はありません。重要なのはそれぞれのビルや部屋や天候(主に風)により必要な窓開けの量が変化するということです。風がある場合、より少ない窓開けで低いCO2濃度を達成可能です。共有のCO2モニターが一つあれば、天候条件に応じた個々の部屋に必要な窓開け量をすぐに調べることができるでしょう。例えばCO2モニターを持った学校の生徒が教室を巡回して調査する活動なども考えられます。

学校などの廊下を換気することは非常に重要です。そうでないと教室間で汚染された空気が移動することになります。

9.4. どんな種類のCO2センサーが信用できますか?

私たちはNDIR (non-dispersive infrared) CO2センサーをお勧めします。100ドルから200ドルで手に入ります。安いセンサーは実際にはCO2を測定しない方法を使っており、私たちの経験では信頼できません。(例えば湿度の高い時や手の消毒薬のそばでは異常に高い測定値をしめすことがある、などです。)

訳者注) 経済産業省が2021年11月に自治体などが導入する際の指針「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」を公開しました。(NDIRを含む)赤外線方式であること、値の補正機能があること、の2点が条件として挙げられています。値のずれと補正(校正)についてはこちらもご覧ください。


例えば、下に示すセンサー(Aranet4)はREHVAの研究員がテストを行いより高度なセンサー他のいくつかのセンサーとの比較でも安定した結果が出ています。(私たちはこの会社となんの繋がりもありません。)こうしたコストが個人では高すぎる場合、学校内、企業内、地域で共有することも可能でしょう。

私たちはAranet4や高度なセンサーと比較する形で他の市販センサーの評価も行っていますので、他のセンサーも将来的には推奨する可能性があります。他にもより低価格なCO2センサーを開発し、設計図を公開しようというプロジェクトもあります。こうした活動を支援しています。
もし他のセンサーを評価した情報があれば教えてください。テストのためにセンサーを提供したいという企業があれば連絡をください。

9.5. 大きな部屋ではどこにCO2モニターを置くべきですか?

理想的には部屋の中心で、息をする高さ(1.5m)かもう少し高い位置です。人の近くに置きすぎると吐かれた息の影響を直接受けてしまうため避けてください。また、窓や空調の吹き出し口のように外気の入り口も避けてください。吸気口の近くに置くのは部屋の平均的な空気を収集できるためよい方法です。

CO2モニターを部屋の中の様々な場所に移動するのも良い方法です。定常状態になると普通違いは小さいです。(9.3参照)

9.6. 全ての公共の場所でCO2を測定して掲示することを推奨しますか?

はい、人々が同じ空気で呼吸をする全ての場所において空気の質の測定(と掲示)を標準にすることを推奨します。これにより、パンデミックの沈静化に伴い、屋内空間をより客観的な「呼気の再吸入量(the amount of re-breathed air)」に基づく人数制限で再開できるようになります。例えば、それぞれのレストランで換気効率が異なるため、「レストランは50%の人数でオープン可能」といった押し付けられた(arbitrary)制限よりも受け入れやすいはずです。

このパンデミックが沈静化したら、将来の(次の)パンデミックも含めたたくさんの空気感染の病気を換気により予防することができます。加えて、他の化学物質に関連した空気の質に関する問題にも換気は有効です。下の図はこうした提案を表現したものです。

「すべての公共空間でCO2濃度を掲示すべき」
バー、ジム、教室などでCO2濃度を掲示している例

9.7 呼吸によるエアロゾルを直接測定することはできますか?

はい、できます。しかしCO2濃度を測定するより困難(confusing)です。人の呼吸によるCO2排出は非常に強力なCO2発生源であり、多くの場合屋内で支配的です。しかしエアロゾルは、屋外からのエアロゾルがどれだけフィルターされているか、また調理やタバコや歩いた時に舞い上がったエアロゾルなど屋内で発生するものなどの影響を受けます。

直接測定をするのであれば、エアロゾルの大きさ別に測定できるセンサーを用いる必要があります。呼吸によるエアロゾルは通常1μm以上の大きさがあります。一方、公害、調理、タバコによるエアロゾルは1μm以下です。また歩くことで舞い上がるエアロゾルは1μm以上なので測定している間は歩いてはいけません。

8.4 空間の換気率をどのように定量化できますか?

換気率は通常、次の2つの方法のいずれかで表されます。

  • 空気交換率(ACH): ACHは、部屋の空気が外気に置き換わる速さを指し、その場に存在する人数は考慮されていません。 ACH = 1 h-1の場合、1時間後、空気の63%が外気に置き換えられます。
  • リットル/秒/人(L / s / p)。これは、存在する人の数を考慮に入れており、病気のエアロゾル感染を防ぐための最も適切なパラメーターです。これまで調査された大規模感染(スーパースプレッダーイベント、超拡散事故)は、1〜3 L / s / pの範囲でした。 REHVAは、COVID-19感染を軽減するために、少なくとも10 L / s / p、可能であれば20〜25 L / s / pを推奨しています
  • 2つの量は互いに簡単に計算できます。
    • L / s / p = V *(ACH / 3600)/ N、ここでVはリットル表現の部屋の体積、Nは人数です。

ACHは建物によって大きく異なります。

  • カリフォルニアの学校の調査では、中央値が0.4ACHであることがわかりました。
  • 典型的な家(窓を閉めた状態)の範囲は0.5〜1.5ACHです。
  • 研究所や古い病院では、多くの場合ACHが6程度です。
  • 米国の新しい病院は、12ACHを満たす必要があります
  • 新しい建物から古い建物まで、そして世界中で建物によってACHの値はばらばらです。重要な部屋(空間)では換気率を(正確に)測定することをお勧めします。

ACHの決定は複雑な問題です。ほとんどの建物のメンテナンス担当者は、設計時の値を調べることはできますが、特定の部屋(空間)の現在の換気率を知ることはできません。システムのテスト、バランス調整、試運転を行うエンジニアや技術者は、換気レベルが正しいかどうかを判断できます。多くの空調システムは十分にメンテナンスされていないため、設計どおりに機能しているかどうかを専門家がチェックし、COVID-19に対する対策を強化するために必要に応じて機器を更新することが強く推奨されます。

特定のスペースの換気率を推定する良い方法は、この投稿で説明されているように、手頃な価格(〜$ 150)の測定器で二酸化炭素(CO2)の減衰率を測定することです。ハーバード大学医学部のこのガイドでは、このトピックについて詳しく説明しています。これらの測定を実施するには、技術にある程度精通している必要があります。 なお、CO2を毒性の高いガスである一酸化炭素(CO)と混同しないでください。

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